鳥居シリーズ

鳥居の高さ歴代日本一をしらべてみた

神社の神域と俗界を隔てる結界として役割を果たしているのが鳥居です。

神社のアイコンといえる鳥居ですが、歴代高さ日本一鳥居の遷移はあまり知られていないと思いましたのでまとめてみました。

【平成12年~現在】熊野本宮大社 大斎原 大鳥居

和歌山県田辺市に鎮座する熊野権現の総本宮熊野本宮大社です。
世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産でもあります。

現在の鳥居の高さ日本一は熊野本宮大社の旧社地、大斎原(おおゆのはら)に建つ高さ33.9mの鉄鋼製耐候性鋼板鳥居です。
JFEエンジニアリングによって建設されました。

本宮から若干離れた旧社地大斎原の入り口に鳥居が建っていますが、大斎原は川が合流する三角州に本宮は長らく鎮座していましたが1889(明治22)年の洪水で流されてしまい、現在の社地に遷座しています。

なおこの洪水は森林伐採による人災といわれています。

鳥居データ
名称:熊野本宮大社大鳥居
高さ:33.9m
竣工:平成12年
柱径:2.7m
柱間:24.5m
笠木の長さ:
総トン数:
構造:耐候性剛板
形式:明神鳥居

【昭和61年~平成12年】 車道をまたぐ鳥居日本一 大神神社 大鳥居

奈良県桜井市に鎮座する最古の神社の一といわれる大神神社です。
三輪山をご神体とし、本殿を持たず自然崇拝の原始信仰の形を残す神社です。

鉄鋼製(耐候性鋼板)の高さ32.2mの鳥居であり昭和天皇御即位60年を祝して造営したとのことです。
車道をまたぐ鳥居としては日本一の高さです。

また耐久年数1300年とされていて、地下26mの基礎杭が打たれマグニチュード10の地震にも十分耐える想定です。
観測史上最大のマグニチュードは1950年のチリ地震9.5で東日本大震災の5倍でしたが、それにも耐えうる設計になっています。
こちらも熊野本宮大社大鳥居と同じくJFEエンジニアリングによって建設されました。

鳥居データ
名称:大神神社第一鳥居
高さ:32.2m
竣工:昭和61年5月28日
柱径:3m
柱間:23.5m
笠木の長さ:40.8m
総トン数:185トン
構造:耐候性剛板
形式:明神鳥居

【昭和57年~昭和61年】両部鳥居では日本一 彌彦神社 大鳥居

新潟県弥彦村に鎮座する越後國一宮の彌彦神社の高さ30.2mの大鳥居。

上越新幹線開通を記念して造営されましたが、日本一だったのは3年程度と短い期間でした。

もちろん両部鳥居としては日本一の高さで扁額のサイズは畳12畳分です。
恐らく扁額のサイズは日本一です。

なお、100尺(約30m)級鳥居は現在日本に上記の3基に限られます。

鳥居データ
名称:彌彦の大鳥居
高さ:30.16m
竣工:昭和57年
柱径:3.636m
柱間:20m
笠木の長さ:38.5m
構造:特殊鋼製
形式:両部鳥居

【昭和47年 ~昭和57年】 柱の太さは日本一 最上稲荷 大鳥居

最上稲荷は岡山市北区にある日蓮宗の寺院、最上山妙教寺です。
神社ではなく寺院ですが神仏分離後も神仏習合を許された数少ない寺院のひとつで、江戸期以前の神社仏閣形態を色濃く残しているといわれています。

柱の太さは4.6mで日本一の柱が太い鳥居です。

世界連邦 恒久平和 のために
人命尊重 交通安全 のために
開運招福 光輪拡大 のために

という三大誓願のもと建立されたそう。

平成26年の大改修にてベンガラ色に塗り替えられ、遠くの岡山自動車道からも存在感を示しています。

鳥居データ
名称:最上稲荷大鳥居
高さ:27.5m
竣工:昭和47年
柱径:4.6m

【昭和4年~昭和47年】中村の大鳥居

明治18年に秀吉の生誕地とされる現在の名古屋市中村区に造営された豊臣秀吉公を主祭神とする豊国神社参道入り口に建つ中村の大鳥居です。
中村が名古屋市に編入された記念に地元有志が高さ24.5mの鳥居を造営し日本一の高さとなりました。

中村区役所によると、この中村の大鳥居は特定の所有者がなく「中村区民全体のもの」と解釈されているそうです。

豊国神社はあまり大きな規模の神社ではないにもかかわらず鳥居が超巨大なのは疑問でしたが、豊国神社が所有する鳥居ではありませんでした。

鳥居データ
名称:中村の大鳥居
高さ:24.5m
竣工:昭和4年11月3日
柱径:2.5m

【昭和4年4月10日~11月2日】 神社の鳥居では50年以上日本一の高さ 平安神宮 大鳥居

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笹谷康之投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

平安神宮は明治28年に平安京遷都1100年を記念して京都で開催された内国勧業博覧会の目玉として創建しました。
しかし景観問題や時勢からの資材調達困難によって神社創建から30年一の鳥居がない状態が続いていました。

その後昭和天皇御大礼の記念事業として高さ24.422mの鳥居が建立されましたが、その後中村の大鳥居が竣工、高さ日本一の期間はわずか半年程度にとどまりました。
しかし後の中村の大鳥居は神社の鳥居ではないため神社の鳥居としては神柱宮の大鳥居が造立される昭和57年までの50年以上の間日本一の高さだったといえます。

洛東岡崎のシンボルとして親しまれ、国の登録有形文化財に指定されています。

鳥居データ
名称:平安神宮大鳥居
高さ:24.422m
竣工:昭和4年4月10日
柱径:3.636m
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造鉄網モルタル塗
形式:明神鳥居

【大正4年~昭和4年】大社駅整備に伴って造営 出雲大社 一の鳥居

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Aimaimyi投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

出雲大社の神門通りの入り口に位置する宇迦橋の大鳥居。
国鉄大社線開業に伴い出雲大社の参道の入り口として大正3年にこの辺りが整備されました。

大正天皇御即位の大典を記念して北九州市小倉の篤志家の小林徳一郎により出雲大社に寄進されました。
高さは本殿より少し低い23mに設定、着工からわずか3カ月で竣工しています。

また宇迦橋の大鳥居として平成25年に国の登録有形文化財に指定されています。

名称:出雲大社 宇迦橋の大鳥居
高さ:23m
竣工:大正4年11月
柱径:1.8m
柱間:14m
構造:鉄筋コンクリート及び鉄骨造
形式:明神鳥居

【江戸末期~大正4年】木造鳥居で日本一 北口本宮冨士浅間神社 冨士山大鳥居

世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産であり、吉田口登山道0合目とされる北口本宮富士浅間神社です。
日本三大奇祭のひとつといわれる吉田の火祭りで有名です。

参道中頃にあり、木造鳥居としては日本一高い鳥居です。
神社の鳥居ではなく富士山の鳥居とされ、初代の大鳥居は文明12年(1480年)に建立されました。

神額には「三国第一山」と記され、この三国というのは、日本、中国、インドを指し仏教的な世界観で「世界」そのものを表しているといわれています。

江戸末期の書物である富士山明細図に大鳥居は58尺5寸(約17.7m)と現在の高さに近しく当時から日本一の高さの鳥居だったことがうかがえます。

60年に一度立て替えられますがそのたびに少しずつ高くなっていて、江戸末期の記録より若干高いようです。
現在のものは昭和29年に建立され、平成26年に大修理が行われました。

名称:北口本宮冨士浅間神社 大鳥居
高さ:18m
竣工:昭和29年
柱径:最大1.2m
柱間:11.55m
棟の長さ:
構造:
形式:両部鳥居

その他日本一の銘を持つ鳥居

戦時の憂き目を見た靖国神社の初代大鳥居


国会図書館所蔵写真帳から
護国の英霊を祀る靖国神社の初代大鳥居は靖国神社創建50周年を記念して大正10年に青銅製の「日本一の大鳥居」が造立されました。

高さは21.03m、柱径2.06mのものでしたが、当時出雲大社の一の鳥居はすでに造立されていたはずなので日本一の高さではなかったようです。
そもそも「日本一の高さ」を示したものではなかったのかもしれませんが。

昭和18年に金属回収令という勅令が出されましたが、一応理由としては風雨による損傷として大鳥居は撤去され、資材は戦時供出されました。

再建されたのは昭和49年、現在の第一鳥居は高さ25mです。

神社の鳥居では日本一の高さだった神柱宮

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そらみみ投稿者自身による作品</span>, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

宮崎県都城市に鎮座する神柱宮は宮崎国体を記念して高さ25mの「日本一の大鳥居」として昭和54年に竣工しました。

当時神社の鳥居としては日本一の高さになりましたが、すでに最上稲荷の大鳥居が造立されており日本一の高さではなかったようです。

神社の鳥居としては昭和54年から彌彦神社大鳥居造立の昭和57年まで日本一の高さでした。

おわりに

現在30m越え鳥居は3基、20m越えは前出を含め20基あるといわれていますが、20m級は大正時代に入ってから。
鳥居自体の意味や建造物としての性質から大きさをそこまで求めてなかったともいえますね。

明治時代には近代建築技術も未発達で高層建築物もほとんどなかったでしょうから高さ10mあれば相当立派な鳥居だったと考えられます。

では。